★『イェイ!写心®︎』アカデミー13期生募集開始!★

『遺影写真は「天国に行く準備」ではなく、安心して前向きに生きるための写真』

遺影写真、シニアフォト撮影12

「遺影写真」と聞いて、どんな写真を思い浮かべますか。

・集合写真から切り抜いた、少しピントの甘い一枚。
・免許証のような真顔の証明写真。
・何年も前の写真を引っ張り出してきて、背景を消して使った一枚。
多くの方が、そんな写真を想像されるのではないでしょうか。

ところが実際には、遺影写真は亡くなった後に慌てて選ぶ人がほとんどです。

悲しみの中、数日のうちに決めなければなりません。
「どれがお母さんらしいかな」
「この写真、ちょっと違うんだよな」と、ご家族が迷いながら選ぶことになります。

私は長年シニアの方の撮影をしていて、これまでに1万人以上の方を撮らせていただきました。

その中で確信していることがあります。

遺影写真は「天国に行く準備」ではありません。
「その人が生きた証」で安心して前向きに生きるための写真です。

だからこそ、お元気なうちに、笑顔で、その人らしく撮っておく。
これが私の提案する「生前遺影」の考え方です。

この記事では、遺影写真を撮る意味、いい一枚の条件、撮影前の準備まで、現場で見てきたことをお伝えします。

終活という言葉が広まって、エンディングノートや墓じまい、断捨離などを始める方が増えました。

遺影写真もその流れで、生前に撮影する方が増えています。理由は大きく3つあると感じています。

葬儀は短い時間で多くのことを決めなければなりません。
その中で、遺影写真選びは意外と大きな負担です。
「どの写真が本人らしいか」の正解は、ご家族の中でも意見が割れます。生前に「これを使ってね」と決めてあれば、ご家族はその一枚を信じて進めることができます。

「もっと若い頃の写真のほうがいい」と、昔の写真を探す方がいます。
気持ちはよくわかります。
けれど、撮影を終えた方の多くが、「今の自分も悪くないね」と言ってくださいます。

シワも白髪も、その人が重ねてきた時間そのものです。
それを肯定して残すと、本人にとっても自信になります。

好きな服を選び、髪を整え、カメラの前で笑う。
この時間が、元気の源になります。

「遺影を撮る」と聞くと暗い気持ちになりそうですが、現場はまったく逆です。

笑い声が絶えない、お祭りのような時間になります。

遺影写真、シニアフォト撮影11

撮影を重ねるうちに、「ああ、これは本当にいい一枚だ」と感じる写真には、共通点があることがわかってきました。

それは、写っている人が「撮られている」のではなく、「その場を楽しんでいる」ということです。

ポーズが決まっていなくても、表情が整っていなくても、心が動いた瞬間の顔には力があります。

逆に、緊張してかしこまった顔は、どれだけ構図やライティングを整えても、どこか他人行儀になってしまいます。

だから私は、シャッターを切る前に、まず相手の心を開くことに時間を使います。
撮影中にすぐ距離を縮めて、冗談を言い、思い出話を聞く。

そうすると、不思議なほど表情が変わるのです。

遺影写真、シニアフォト撮影0

ここからは、実際に「いい一枚」を撮るためのポイントを、5つに整理します。

遺影写真、シニアフォト撮影1

この写真の女性は、鏡の前で帽子を選びながら、少女のように笑っていました。
正面を向いたポートレートではありませんが、「おしゃれが大好きな人だったんだな」と、一瞬で伝わります。

遺影は正面の真顔でなければいけない、というルールはありません。

作り笑いは、写真になるとすぐにわかります。
口角だけ上げた笑顔と、目まで笑っている笑顔は、まったく別物です。

自然な笑顔を引き出すコツは、「笑って」と言わないことです。
笑ってと言われると、人は顔を作ってしまいます。それよりも、好きな食べ物の話、孫の話、若い頃のいたずらの話。

心が動く話をしていると、勝手に笑顔になります。

遺影写真、シニアフォト撮影2

この一枚も、ポーズを決めたというより、話しているうちに自然と出た表情です。
口を開けて笑う、その瞬間にこそ、その人の人柄が出ます。

背景に余計なものが写り込んでいると、見る人の視線が散ってしまいます。
無地のグレーやベージュの背景は、顔と表情を引き立てる、遺影の基本です。

一方で、背景に思い出の場所を選ぶ方法もあります。

遺影写真、シニアフォト撮影3

こちらは、青空と海が広がる屋上で撮影した一枚です。
「遺影写真」という言葉のイメージを、気持ちよく裏切ってくれる写真ではないでしょうか。

明るくて、軽やかで、見ているこちらまで元気になります。

こんな写真が祭壇に飾られていたら、参列した方は涙だけでなく、「あの人らしいね」と笑顔になれるはずです。

遺影というと、黒や紺の服を思い浮かべがちです。
けれど、写真の印象を左右するのは、実は色です。
明るい色は、顔色を良く見せ、表情を華やかにします。

遺影写真、シニアフォト撮影4

紫のカーディガンと柄のスカーフ。カメラに向かって手を差し出す姿に、エネルギーがあふれています。服や小物の色が顔まわりを明るくしてくれると、表情もさらに生き生きとします。

撮影前には、「好きな色の服」「お気に入りの小物」をいくつか持ってきていただくようお願いしています。2〜3着、試してみると、思わぬ一枚に出会えることがあります。

最後の条件は、これです。
「若いときの写真を使おう」と考えず、今の自分で撮ること。

人は年を重ねるほど、味が出ます。表情のしわ、手の甲の血管、白くなった髪。

それらは全部、その人が生きてきた時間の記録です。
若い頃の写真は素敵ですが、「最期に近い時間のその人」が写った写真には、ご家族にとって代えがたい価値があります。

「足が悪いので、撮影は難しいと思って」というご相談をよくいただきます。
ですが、そんなご心配は不要です。

車椅子のままでも、歩行器を使いながらでも、まったく問題ありません。
むしろ、それも含めて「今のその人」です。

遺影写真、シニアフォト撮影5

この写真の男性は、歩行器につかまりながら、全力のサムズアップを見せてくれました。
体の状態に関係なく、表情と姿勢には、その人の気持ちが表れます。

撮影のあいだ、ずっとご機嫌でした。

介護施設や自宅への出張撮影も、私たちは大切にしています。
移動が難しい方こそ、ご自身の空間で、安心して撮影を楽しんでいただきたいからです。

遺影写真、シニアフォト撮影6

照れてしまって、手で顔を隠してしまう。
そんな瞬間も、私たちにとっては大切な1枚です。

「恥ずかしい!」という気持ちまで、写真に残るからです。

完璧に整った写真より、その人の感情が動いた写真のほうが、見る人の心に残ります。

遺影は一人で撮るもの、と思われがちですが、ご夫婦やご家族と一緒に撮る方も多くいらっしゃいます。「二人の写真を残したい」という気持ちは、遺影という枠を超えた、家族の宝物になります。

遺影写真、シニアフォト撮影7

何十年も一緒に歩んできたご夫婦。
並んで座って、そっと手をつなぐ。

それだけで、言葉以上のものが伝わってきます。

この写真は、ご夫婦のどちらかが先に旅立たれたあとも、残された方の支えになるはずです。

遺影写真、シニアフォト撮影8

こちらは、肩を組んで笑い合うお二人。
歯が抜けていても、車椅子に座っていても、お二人の笑顔は最高に輝いています。

「かっこいい写真」ではなく「愛おしい写真」とは、こういう一枚のことだと思います。

最後に、遺影写真を撮る前に準備しておくと良いことを、簡単にまとめます。

・服装を2〜3パターン用意する
お気に入りの一着、明るい色の一着、いつもの普段着。
複数あると、表情の幅が広がります。

・小物を持っていく
帽子、スカーフ、アクセサリー、花など。
その人の「好き」が詰まったものを、ぜひ持ってきてください。

・髪型や眉を整えておく
美容院に行った直後のタイミングがおすすめです。
ヘアメイクが付く撮影会もあります。

・当日は睡眠をしっかりとって、リラックスして来る。
緊張すると表情がかたくなります。
「楽しんでこよう」という気持ちで来ていただくだけで、写真は大きく変わります。

・家族にも声をかけておく
できれば、ご家族にも撮影の様子を見てもらうのがおすすめです。
「こんな写真を残してくれるんだ」と知ってもらえるだけで、安心感が違います。

遺影写真、シニアフォト撮影9

私たち「長生き写心」では、撮影のあとに、人生を振り返るインタビューを行うことがあります。
いわゆる「自分史」です。

撮影中にすっかり心を開いてくださった方は、インタビューでも驚くほど本音を話してくださいます。
どんな子ども時代を過ごしたのか。

・どんな仕事をしてきたのか。
・大切にしてきたこと。
・後悔していること。
・ご家族への思い。

こうした言葉は、写真と一緒に残すことで、遺影写真に「物語」が加わります。
ご家族にとっても、写真を見るたびに、その人の声が思い出される。
そんな一枚になります。

最近は、介護施設で、入居される方の生活歴を知る手がかりとして、自分史を活用する動きも広がっています。
写真と言葉は、その人を知るための、いちばんやさしい入り口なのです。

遺影写真は、悲しみの象徴ではありません。
その人が生きた時間と、愛された証を、いちばんいい形で残す、残された人へのギフトです。

ここまでご紹介した写真の方々は、皆さん、撮影のあいだ、本当に楽しそうでした。
笑って、ふざけて、照れて、おしゃれを楽しんで。

撮影が終わったあと、「楽しかった。また撮ってね」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

もし、あなたやご家族が、まだ遺影写真を用意していないなら、「縁起でもない」と思わず、ぜひ一度、カメラの前に立ってみてください。

「今の私が、いちばん素敵」と思える一枚が、きっと撮れます。

その写真は、あなた自身を勇気づけ、そして、あなたを愛するたくさんの人の心に、ずっと残り続けるはずです。

遺影写真、シニアフォト撮影10